おにぎりの記憶

とあるイベントのため、休日出勤したときの話。


見動きが取れない仲間に、買出しを頼まれた。
さっと食べれるもので、お願いね。

ちょっと考えてから、
蔵前の、お惣菜屋さんで、 
不格好なおにぎりと、唐揚げを買って帰った。


みんなで、車座になって、つまむ。

しんなりした海苔の感触。
焼きたらこが、できるだけ最後まで残るよう、
注意して、食べる。
時折はさむ、ちょっとしょっぱい唐揚げ。
ぷうんと部屋全体に広がる、お肉と衣のにおい。


けっして、上等な食事とは、いえない。


でも、美味しい。
とても、美味しい。


わたしは、小学校の運動会で家族と食べた
お弁当を、思い出していた。
遠足、運動会、なにかイベントがあると、
大好きな、母親のお弁当が食べられた。


ああ、そうだ。これだ。
懐かしい感覚を思い出し、反芻していた。


人の感じ方は、経験からプログラムされると思う。
長く生きていると、経験という層に、どんどん覆われて、むくむく大きくなって、
基準が変わっていく。

こんな、安っちい食べものなんて。 
こんな、くだらないふるまいなんて。
だんだん、生意気になってくこともあるだろう。


でも、玉ねぎの芯みたいな、原始的な部分は、
変わらないのではないかしら。


うん、変わらないでいたい。


目の前で無口におにぎりを頬張るあなたは、
どう、かんじているのかしら。
あなたがどんな生き方をしてきたか、まったく知らないけど、
おんなじような芯をもってたら、
ちょっぴりしあわせ。


ごちそうさまでした。